外壁塗装に使う塗料は、油性塗料と水性塗料の2種類に大別されます。油性と水性の基本的な違いはご存知かと思いますが、外壁塗料の場合はどのような違いがあるのかご存知でしょうか?
本文で詳しく解説しますが、外壁塗料の油性と水性は主成分に大きな違いがあります。主成分は塗料特有の臭いにも関係してくるので、外壁塗料を選ぶなら知っておいた方がいい知識です。
本記事では、外壁塗装で使う油性塗料(溶剤塗料)と水性塗料の特徴をふまえメリット・デメリットを比較していますので、外壁塗料の選び方で迷っている方はぜひ参考にしてください。
目次
外壁塗装で使う塗料の種類
外壁塗装で使う塗料は油性塗料と水性塗料の2種類です。外壁塗料にはアクリル系塗料、ウレタン系塗料、シリコン系塗料、フッ素系塗料などいろいろな種類がありますが、いずれの塗料も油性か水性のどちらかに分類されます。
ボールペンインクの場合、油性は耐水性が高いが書き味が重い、水性は耐水性が低いが書き味が軽いといった特徴がありますよね。水ににじみやすいかどうかも大きな違いです。
では、油性塗料と水性塗料をどのような特徴で分けるかご存知でしょうか?
外壁塗料の油性と水性の違いを一言で表すと以下になります。
水性塗料:水で塗料を溶かす
油性塗料(溶剤塗料):シンナーなどの有機溶剤で溶かす
水性塗料は文字通り水で塗料を溶かしたもの、油性塗料はシンナーなどの溶剤で溶かすものを指します。油性塗料は溶剤に溶かしているので正確には溶剤塗料になりますが、水性に対する言葉として油性を使う場合が多いです。
※本記事では、以降は油性塗料で統一して呼称します。
業者に依頼するにしてもDIYをするにしても、水性塗料と油性塗料の違いを知っておいて損はありません。同じ塗料でも水性塗料と油性塗料は別物なので、むしろそれぞれの特性を知らないと外壁塗料選びで失敗してしまう恐れがあります。
水性塗料の特徴
水性塗料の主成分は水です。水で溶かしたものを水性塗料と呼んでおり、有機溶剤に溶かす油性塗料とは区別しています。
水性塗料を外壁に使うと雨に流れないかと心配される方も多いかと思いますが、乾燥すれば水に溶けることはありません。水性塗料の主成分は水ですが、塗装すると水分が揮発して非水溶性の樹脂(塗膜)と顔料(色の成分)が残るので、乾燥していれば雨が降っても大丈夫です。
ただし、乾燥する前に雨が降ると流れてしまうので、天候には気をつけてください。晴れていても夕立やゲリラ豪雨が降ることがあるので、雨が降りにくい時間帯に塗るとよいでしょう。
水性塗料のメリット
水性塗料のメリットは以下の6つです。
・値段が安い
・臭いが少ない
・人体への影響が少ない
・環境への負担が少ない
・保管しやすい(危険物に該当しない)
・内装に使える
水性塗料の主成分は水ですので、油性塗料と比べると値段が安いです。また、シンナーなどの有機溶剤を使う油性塗料と違い、水を主成分とした水性塗料は安全性が高いと言われます。
しかし、水性塗料だからといって全く有害物質が含まれていないわけではありません。VOC(揮発性有害化合物)などの有害物質の含有量は塗料によりますが、水性塗料にも含まれています。
シンナーを使っていないという点では、油性塗料よりは安全性は高いと言えますが、水性塗料にも含まれていることを覚えておいてください。
また、油性塗料はシンナーなどの溶剤で希釈するほど環境への悪影響が増しますが、水性塗料は水で希釈するので環境への負担が少ないのも特徴として挙げられます。水性塗料にも少なからず有害物質が含まれているので100%安全というわけではありませんが、油性塗料と比べると環境に優しいです。
油性塗料はシンナー特有の化学的な臭いがしますが、水性塗料は臭いがほとんどしません。全く臭いがしないわけではありませんが、溶剤の臭いはしないです。
人体への影響という点も考えると、シンナーで希釈する油性塗料と比べると安全性は高いと言えます。ただし、水性塗料を使う場合も換気は必要です。特に内装に使う場合は窓を開けるなど、換気をした上で使用してください。
水性塗料のデメリット
水性塗料のデメリットは以下の5つです。
・油性塗料より寿命が短い
・塗布できる素材が限られる
・ツヤが落ちやすい
・気温が低いと施工できない
・乾燥するまでは水に弱い
水性塗料は有機溶剤を使用しないため、塗膜の強さでは油性塗料に劣ります。それはつまり寿命が短いということです。
水性塗料は水が主成分であるため、鉄などの水を弾く素材には塗布できません。塗布できる素材が限られるのも水性塗料のデメリットです。
水性塗料は気温が低い(5℃以下)と硬化機能が落ちてしまい、施工することができません。油性塗料は気温が低くても施工できますが、水性塗料が施工可であるかは気温によって左右されます。
油性塗料の特徴
油性塗料はシンナーなどの有機溶剤で溶かしたもので、扱いには注意が必要です。溶剤の中でも溶解力の強いラッカーシンナー、ウレタンシンナー、エポキシシンナーといったものを「強溶剤」、溶解力の弱い塗料用シンナーを「弱溶剤」と呼びます。
油性塗料のメリット
油性塗料のメリットは以下の4つです。
・耐水性が高い
・塗料密着が良い
・ツヤが長持ちする
・低温でも施工できる
塗膜の耐久性では油性塗料に軍配が上がります。水性塗料と比べて長持ちしやすいため、再塗装の頻度は少なくて済むでしょう。
ツヤが長持ちしやすいのも油性塗料を使うメリットです。汚れにくいので長く美しさを保つなら油性塗料が向いているでしょう。
水性塗料の項目でも説明しましたが、水性の場合は低温すぎると硬化機能が落ちて施工ができません。対して油性塗料の硬化機能は気温に左右されないため、低温でも施工可能です。寒冷地域や気温が低い季節に外壁塗装をするなら油性塗料が向いています。
油性塗料のデメリット
油性塗料のデメリットは以下の6つです。
・溶剤の臭いがきつい
・水性塗料より値段が高い
・人体への影響
・環境に負担がかかる
・保管に注意が必要(危険物に該当する)
・内装に使えない
油性塗料は有機溶剤を使っているため、きつい臭いがします。マスクをせずに換気の悪い場所で油性塗料の臭いを吸い続けると頭がクラクラするなど人体へ影響する恐れがあるので、使用する際は十分に注意してください。
油性塗料は有機溶剤が多く含まれているため、危険物に該当します。水性塗料と保管するのが難しく、保管の仕方を間違えると事故に繋がるかもしれません。
油性塗料は主に外装に使用するもので、内装には使えません。内装に使うなら水性塗料の方です。
塗料とシックハウスの関係
住宅の建材が原因でかかるシックハウス症候群は、塗料がひとつの原因とされています。シックハウスというのは家の中いるとめまい、喉の痛み、頭痛、倦怠感といった体調不良が起こる症候のことです。
シックハウス症候群は塗料や集成材の接着剤に含まれるVOC(揮発性有機化合物)やホルムアルデヒドといった有害物質が原因で引き起こされます。少量では症状が現れにくいですが、塗料や接着剤から揮発する有害物質を吸い続けると症状が現れることがあります。
外壁塗装の場合は内装と違ってシックハウス症候群にかかる心配は少ないですが、油性塗料にはシックハウスの原因となるVOC(揮発性有機化合物)などの有害物質が含まれていることがあるのでDIYで使用する際は注意が必要です。
シックハウス対策として、近年は自然素材リフォームが注目されています。有害物質を含まない建材を使うリフォームの手法で、塗料も含めて安全な素材を使うことでシックハウスを予防します。
自然素材だけで作られた塗料も販売されていますので、シックハウスにかからないか不安な方はそうした安全性の高い塗料を使うのもひとつの選択肢です。
結局、外壁塗装には水性塗料と油性塗料のどちらが向いているの?
ご覧いただいたとおり、水性塗料と油性塗料にはそれぞれ一長一短があります。安全性で言えば水性塗料の方が安心ではありますが、機能性で比較すると油性塗料の方が優れていると言えるでしょう。
油性塗料は耐久性が高く、ツヤが長持ち、さらに水性塗料では使えない低温でも施工ができるというメリットがあります。風雨にさらされる外壁や屋根には耐久性に優れている油性塗料に軍配が上がりますが、有機溶剤によるきつい臭いと人体への影響が懸念点です。
環境や人体への影響を考えるなら、水性塗料の方が向いているでしょう。水性塗料にも少なからず有害物質が含まれている場合がありますが、油性塗料と比べると環境と人体に優しいのは言うまでもありません。
自然素材リフォームをするなら、水性塗料を選ぶのが良いかと思います。いずれにしても油性塗料は内装には使えませんが、外装の塗料の安全性にもこだわるなら水性塗料がよいでしょう。
DIYで外壁塗装をするなら、安全面と管理のしやすさも考慮して選ぶことをおすすめします。油性塗料は保管が難しいので、水性塗料を選ぶ方が無難なのではないでしょうか。油性塗料を使いたい場合は、業者に任せた方が安心です。
おわりに
油性塗料と水性塗料の違いに納得していただけたでしょうか?ボールペンインクの油性と水性の違いとは随分異なるので、外壁塗料を選ぶなら両者の違いを正しく知っておいた方がよいでしょう。
簡単にまとめるなら機能性を重視するなら油性塗料、安全性を重視するなら水性塗料ということになりますが、メリットとデメリットを総合的に比較してどちらが良いか選んでいただくのがよいかと思います。
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